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2020年0月
男性介護者の会「みやび」

年齢が若い家族介護者(ヤングケアラー)について

家族介護を担うのは、中高年の人たち=このような固定的な見方は今は昔の話。年齢が若い家族介護者、ヤングケラーも人知れず立派に介護を担っているのです。(日本語:家族介護者=英語:ケアラー)

 

ヤングケラーという言葉は、決して和製英語とかではなく、ヨーロッパを中心にずっと昔からあった言葉です。日本では一部の専門家に留まっていましたけれど、ヤングケラーへの支援は学界にて論じられてきました。ただ、一般に日本でヤングケラーが注目され始めたのは、今から7年前のことです。

 

平成25年暮れ、東京の一般社団法人日本ケアラー連盟が、テレビ番組にてヤングケアラーの存在をアピール。年が明けて、平成26年2月、高岡市にて、われら男性介護者の会「みやび」と、イギリスから来日したヤングケアラーを支援する非営利団体の中心メンバーと、東京から来県したヤングケアラーを研究テーマとする大学の先生との三者で、ヤングケアラーを取り上げたイベントを実施。その後、首都圏や関西圏で同様のテーマでシンポジウムが催され、各報道機関がこぞって取り上げたのも手伝って一気に「ヤングケアラー」という言葉が広まっていきました。

 

高岡市でのイベントから6年半が経ち、ここのところ、ヤングケアラーが一層注目を集めるようになってきました。本稿ではヤングケラーについて要点をまとめてみたいと思います。

 

【出発点】

「ヤングケアラーはじめ家族介護者が直面する問題は、個人の問題ではなく社会問題である」。この点を確認することからすべてが始まります。

 

【定義】

ヤングケアラーを何歳から何歳までとするかという明確な定義は、学界でも政策現場でもまだ定められていません。東京の一般社団法人日本ケアラー連盟は、イギリスに倣って18歳未満としていますが、私は、「20代から30代前半までの間に介護している人、または、介護していた人」と介護が終わった人も含めて定義しています。

 

理由は、介護政策の歴史的背景が異なるイギリスの分類を、そっくりそのまま日本に適用することに疑問を感じること、若くして介護を担った人が、介護終了後も精神的な面で長年引きずっていることに目配りをしたいからです。

 

最近、若くしてがんと診断された人たちが「AYA (adolescent and young adult )世代のがん患者」と言われ、番組や記事に取り上げられています。私もこの表現に倣って20代から30代前半までの家族介護者(ケアラー)を「AYA世代ケアラー」という言い方をすることが多くなっています。

 

【なにが問題か?】

①学習や就職の制限

家族介護者の問題は立派な人権問題です。ヤングケアラーの場合、年齢差別が根っこにあり、学習や就職の制限が特に強く出る。この点が1つ目のヤングケアラーが抱えている困難といえます。

 

②大きな精神的負荷

介護生活は他者との交渉ごとの連続であります。病院での医師との面談、医療ソーシャルワーカーとの話し合い、介護認定を受けるときの手続き、ケアマネジャーとの打ち合わせ等々。まだまだ、人生経験が浅いヤングケアラーたちが、こうした交渉ごとに家族の代表として臨まなければならない。交渉ごとがうまくいくかどうかはヤングケアラーの双肩にかかっている。ヤングケアラーとしては、不安で不安でたまらない心情になります。

 

③若さゆえの悩み―結婚なんて

3つ目のヤングケアラーの悩みは、結婚という最も大きなライフイベントは別世界の話という点です。

ヤングケアラーたちは、「そりゃ、結婚はしたいですよ。でも、進学や就職もままならない今の生活で結婚なんてどこの世界の話ですか」と口を揃えて訴えます。

 

【今後の方向性は?】

がん対策基本法制定によって、AYA世代がん患者への政策的支援が急ピッチで進んだように、介護者支援ための基本法が早急に制定される必要があります。ヤングケアラーをはじめ家族介護者が抱える問題を解決することが、団塊ジュニア世代が65歳になる2040年代に向けての喫緊の課題であり、持続可能な社会への礎になると捉えています。

 

※9月4日(金)夕方放送のチューリップテレビのニュース番組N6のなかの「ニュースの言葉」

で「ヤングケアラー」を取り上げていただきました。チューリップテレビ様に感謝申し上げます。

 

 

高岡市民活動情報ポータルサイト「サポナビたかおか」の有効活用

【発想の転換】

例年なら、年度明けから活動をロケットスタートさせるのですが、今年は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響で活動拠点の高岡市男女平等推進センターが、使えない日々が続いています。そこで、今年度は発想を変えて、全国に誇れるこの高岡市民活動情報ポータルサイト「サポナビたかおか」の利用を通して、男性介護者の会「みやび」の活動をスタートさせたいと思います。

 

平成24年2月に設立した男性介護者の会「みやび」は、活動開始から8年が経過しました。幾年経とうとも、活動のエネルギーを蓄える「燃料タンク」は常に満タン状態で元気いっぱいです。活動を始めた頃は、男が家族の介護するという営みに理解が得られないことがありましたが、8年経った今、高岡市においても男性介護者の存在が承認され、地域包括支援センターでは男性向けの介護教室などが実施されるようになってきました。男性介護者の会「みやび」は、登録メンバーは10名と規模は小さいですが、とりわけ、高岡市において、家族の介護する人への社会的支援の重要性を訴えてきたこと、今は男性も介護を担う時代であるという家族介護の見方そのものをシフトさせてきたことについては、活動の成果であると自負しています。

 

【常に変化する家族介護者への眼差し】

一口に家族介護といってもその内容は状況と環境によって変化します。家族介護を変化させる要因は、制度などの外的環境はもちろんありますが、家族を介護する人の介護への慣れやスキルの向上、経験値の蓄積などによる変化も大きく影響します。よって、家族介護者への支援は、変化に合わせて見極め作業を継続していく必要があるのです。

 

男性が家族の介護をしているという現状が注目され始めたのは、今から15年ほど前です。それまでは、家族介護は専ら女性がするものとされていたため、男性が家族介護を担っているという事実は、当時、センセーショナルに受け止められました。ただ、あまりにも急激に着目されたため、副作用もありました。

「男は家事ができないから介護を担ったら苦労する」

「男性にDV加害者が多いから、男が介護すると虐待に結び付くから危険だ」

「仕事ばかりしてきた男性は、地域とのつながりがないから孤立する」

このような一側面のみみただけで、まるでそれがすべてであるかのような短絡的な男性介護者への眼差しが、ジェンダー規範を追認するような偏見が、社会の隅々にまで浸透してしまったのも、また事実なのです。

 

【今年度の活動の方向性】

男性介護者の会「みやび」の今年度は、男性介護者に対する固定的なイメージを払拭すること、先が見えないといわれる家族介護の始まりから終わりまでを可視化すること、家族の介護を担っても、介護者本人が健康で仕事ができて、趣味や友人との付き合いを継続できる自己実現可能な社会の形成に向けて尽力すること。この3つのポイントを軸に活動していく計画です。(続く)